「しつらえ」という言葉を聞くと、茶道や四季の行事に合わせた装飾を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
日本の歴史の中で、中世や千利休の茶の湯の時代には、四季の行事やもてなしを通じて、場に意味を与えることが「しつらえ」になり、明治以降の西洋化の流れの中で、この言葉は日常から次第に姿を消し、インテリアや装飾といった概念と混ざり合ってしまった。
けれども、中世以前の日本において「しつらえ」とは、単なる飾りではなく、目に見えないものへの配慮そのものだった。
豊穣や健康を祈り、神仏や自然に敬意を払うための場の整え。
安心して暮らすために置かれた結界。
そこには、人と人、人と自然、人と見えない存在をつなぐ祈りの形があったのだと思う。
いまでも、中世以降に定着した「場や時間に意味を与える行為」として、形を変えながら続いてきた、正月飾りや節句、供花などは残っている。