本草学と、花と祈り

本草学(ほんぞうがく)とは、植物や鉱物、動物など、自然界のあらゆるものの性質や働きを観察し、記録し、暮らしや養生に活かしてきた、古代から受け継がれる知恵です。

日本には奈良時代に中国から伝わり、やがて香や食、薬、染、飾りといった日々の営みの中に溶け込み、四季の移ろいと共に育まれてきました。

SHIYAでは、この古くて新しい本草学の知恵をもとに、花や香り、お茶や入浴といった日々の習慣の中にそっと取り入れ、整える道具として提案しています。

忙しく情報があふれ、時間が常に流れていくような今だからこそ、私たちは自然のリズムから離れ、本来の自分の声を見失いがちです。

だからSHIYAは、香りや味、触れる感覚を通して、自然と自分のリズムをもう一度思い出すような、小さな余白の時間を届けたいと考えています。

それは、単なるセルフケアではなく、日々を祓い清めるような所作であり、静かに自分を愛するための儀式です。

そして、SHIYAがもうひとつ大切にしているのが、「花の文化」です。

日本では、花はただの装飾ではなく、祈りや清めの象徴として、暮らしの中で息づいてきました。

神前の榊、仏前の供花、茶の湯の一輪。

花をいけるという行為そのものが、心を整える「かたち」だったのです。

古来より日本人は、道端に咲く花に季節の訪れを感じ、野にある草を薬として用い、風にそよぐ葉音に心を鎮めながら、自然とともに暮らしてきました。

梅や桜、山吹やレンゲソウ、菜の花やツクシ。

紫陽花、桔梗、撫子、女郎花、ミョウガの花。

萩、吾亦紅、野紺菊、寒椿、水仙、南天…。

それらは観賞のためだけでなく、季節の記憶を宿し、私たちの心に寄り添う存在だったのです。

本草花という言葉

しかし近代になり、花は「管理されるもの」「消費されるもの」へと変化し、品種改良された花々が並ぶなかで、私たちはいつしか、道端に咲く名もなき草花に目を向けることが少なくなっていきました。

だからこそSHIYAは、「本草花(ほんぞうか)」という言葉を掲げました。

それは、本草学の考えをもとに、日本の風土に根ざした草花を暮らしの中で活かし、もう一度、自然とともに生きる感覚を取り戻したいという願いから生まれた言葉です。

本草花とは、ただの観賞用の花ではなく、私たちの生活のすぐそばにあって、身体と心にそっと寄り添い、祈りや整えの道具となるような、そんな自然の中から生まれた花のこと。

SHIYAは、本草学と花の文化を重ね合わせ、日々の中に小さな祓いと自分を大切にする時間を、静かに、そして確かに。

届けていきたいと思っています。

一杯のお茶に季節を映し、一枝の花に心を澄ます。

どうぞSHIYAの空間で、自分に還る静かなひとときを、お過ごしください。